カンガルーケアで愛着形成が変わる!驚きの効果とリスクも知っておこう




「カンガルーケア」という言葉を産院で聞いたり、本などで目にしたことがありませんか?

最近では「バースプラン」として希望する人も増えてきましたが、実際の効果を認識している人は少ないかも知れません。

そこで今回は、カンガルーケアを行う上での「効果」「危険性」などを紹介したいと思います。



カンガルーケアとは?始まったきっかけ




~カンガルーケアとは~

分娩後、赤ちゃんを裸のまま、母親の乳房の間で抱っこし、冷えないようにバスタオルなどをかけます。そして哺乳させたり、触れ合ったりしながら、しばらくの間一緒に過ごすケア方法です。

その姿がカンガルーの親子に似ていることから「カンガルーケア」と名付けられました。

「Skin to skin contact(直肌の抱っこ)」と呼ばれることもあります。


~始めたきっかけ~

カンガルーケアは1979年に南米コロンビアの首都ボゴタで、新生児ケアにあたっていた2人の小児科医が始めました。

当時コロンビアでは、経済危機のため「定員オーバー、器材不足、スタッフ不足、保育器不足」の状態で、1つの保育器に2~3人の新生児を収容することも…。

そのため未熟児の70%が感染症や呼吸器の問題で亡くなったり、早期の母子分離によって母子の愛着形成ができず、養育遺棄する人が多くいました。

そこで、保育器の代わりの「緊急的な対処」と、母子の「愛着形成」を図ることを目的として「カンガルーケア」が始まりました。

その結果、低出生体重児の「死亡率の低下」「養育遺棄」が減少したのです!


日本は「母子関係の強化」が主な目的です。他にも様々な効果が認められたため、正期産の母子へのケアとして取り入れられています。




カンガルーケアで得られる3つの効果




赤ちゃんが生まれてすぐに行う「カンガルーケア」は、ママは疲れて余裕がないかもしれません。しかし、赤ちゃんとすぐ触れ合うということは利点がたくさんあります。

1.母親が赤ちゃんへの愛情を実感しやすい

分娩後にすぐ赤ちゃんと触れ合うことで、赤ちゃんへの愛情を実感し、母親としての自覚が得られ「愛着形成」を促進させます。

2.母乳育児がスムーズ

赤ちゃんがおっぱいを飲むと、母親の体内から愛情ホルモン呼ばれる「オキシトシン」が盛んに分泌され、母乳が出やすくなります。産後すぐに赤ちゃんとママが密着することで、母乳分泌が増し、母乳哺育の期間が長くなります。

3.赤ちゃんも安心感を得られる

「オキシトシン」によって、乳房の表面温度を上昇させ、母親の肌に触れている赤ちゃんに温もりを与えることで、赤ちゃんは安心感を得られます。

皮膚接触により、赤ちゃんの体温が維持され、血糖値が安定し、呼吸の安定などにも効果が期待できます。また体重増加を促進します。



カンガルーケアの具体的な方法は?




カンガルーケアを希望した場合、どのように実践されるのか、具体的な方法と流れを紹介します。

①実施時間

正期産児向けの方法は、生後30分以内に2時間程度のスキンシップを行います。

長い時間赤ちゃんとママが密着した方が効果的ですが、産院よって実施時間には差があります。



②具体的な方法と流れ

1.赤ちゃんは裸の状態でママの胸の上で過ごす

分娩後、へその緒を切ったら赤ちゃんは「おむつをつけただけの状態」でママの胸の上にうつ伏せに寝ます。その上から、バスタオルをかけ、2時間程度母子ともにゆったりとした時間を過ごします。


2.初めての授乳をする

赤ちゃんは生まれてすぐにママのおっぱいを探す本能を持っています。赤ちゃんが乳房を探す仕草をし始めたら、乳首を口に入れる手助けをしてあげて授乳を行います。


3.病院によって家族(パパ)のカンガルーケアも可能

ママがカンガルーケアを行ったあと、パパもカンガルーケアに近い抱っこを行える産院もあります。パパは裸と裸の触れ合いではなく、赤ちゃんもパパも服を着た状態で行われます。

生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこすることで「父性」が生まれ、育児に積極的に参加する効果があります。


③カンガルーケアをできないケースもある

出生直後の赤ちゃんの呼吸は不安定なこともあり、赤ちゃんやママの健康状態を考慮し、医師の判断によってカンガルーケアを行えないこともあるので確認しておきましょう。

(例)
・妊娠週数や分娩経過に異常がある

・ママに出血、高血圧、痛みなど、体調が不安定

・赤ちゃんに奇形や呼吸障害の症状がある

・出産時に吸引分娩を行なったときは医師の判断による




カンガルーケアの3つの危険性




「カンガルーケアの危険性を事前に知っていればその選択はしなかった」という声も実際に存在しています。

危険性については次の3つが考えられますので紹介します。

1.赤ちゃんが上手く呼吸できない

カンガルーケア中に、赤ちゃんの呼吸が弱くなったり、時には呼吸停止してしまうという事例も。ただカンガルーケアを行わない場合でも、出産直後の新生児の容体が急変するケースはあります。そのため、経過観察を怠った産院に責任を認めることはあっても、カンガルーケアとの因果関係は依然として不明のままです。

2.赤ちゃんの体温が下がる

カンガルーケアは元々コロンビアで始まったと紹介しましたが、日本とコロンビアでは環境が違います。日本の分娩室は室温が25度前後に保たれていることが多く、生まれたばかりの赤ちゃんにとっては「寒い」という指摘も。自律神経が安定していない出生直後の赤ちゃんは「低体温状態」に陥りやすいリスクもあります。


3.赤ちゃんが転落する

赤ちゃんが移動するとき、転落の危険がないわけではありません。出産直後のママは、疲労のため判断力が鈍り、日常的な動作もいつも通りにはできません。転落を防止するためには、助産師さんや家族などの付き添いが必要です。

カンガルーケアをしなかったからといって「赤ちゃんとの絆が築けない」「母乳育児に弊害が出る」という訳ではありません。危険性をしっかりと認識した上で、必要かどうか考えてください。



母乳育児の2つのポイント




WHO(世界保健機構)やユニセフ(国連児童基金)では「母乳育児を成功させるための10条」という取組みがあります。

母乳育児を推進するため、カンガルーケアを実践する産院も増え、日本全国の約6割の産院で行われています。

ここでは、その母乳育児の2つのポイントをご紹介します。

1.母乳育児は、産後1週間が重要

出産して息つく暇もなく、授乳が始まります。初めておっぱいを我が子に飲んでもらったときの気持ちは本当に感動的なものです。

でも理想と現実のギャップに戸惑う方が多いのも事実。産後1週間は、ママの疲労も大きく、睡眠不足で苦労することも…

・母乳が出ない
・上手く飲んでくれない
・飲んだのにすぐにまた欲しがる
・胸が張るので痛い

しかし、産後1週間は赤ちゃんにとって大切な「初乳」が出る期間でもあります。栄養も豊富で「初乳」を飲むことで免疫もつきます。

産後1ヶ月たてば、母乳の出る量も安定し、赤ちゃんもスムーズにおっぱいを吸って、母乳育児も楽なものへと変わっていくので、焦らなくても大丈夫です。


2.ママも赤ちゃんも練習が必要

赤ちゃんの中には「上手におっぱいを飲める子」と「飲めない子」という個人差がありますし、ママのおっぱいも「最初から出る人」「2~3日後に出る人」という違いがあります。

おっぱいも練習です。

練習すればママも赤ちゃんも上手にできるようになります。

母乳が出ないから諦めてしまうのではなく、出産直後から授乳を続けることが大事です。

ただ、授乳がストレスになり、もうやめてしまいたいと感じることもあると思います。

そんな時は「粉ミルク」に頼ってみたり、1人で抱えこまずに、助産師さんのアドバイスをもらってみてください。




きちんと理解してから取り入れる




最近は、多くの産院でカンガルーケアが実施されるようになりましたが、どこでも実施しているわけではありませんので、希望される方は産院に確認してみてください。

カンガルーケアを行う際の、メリット・デメリットをきちんと理解して、家族と相談し、バースプランに取り入れるか考えてみてくださいね。