茶道の「茶人の正月」と「亥の子餅」を食べる理由は?2020年はいつ?

11月に入り、寒さも深まってきましたね。
美しい紅葉を見ながら、ゆっくりお茶でも飲みたいものです。

11月は「茶道」の世界ではとても大切な時期なんです。
「茶人の正月」と言われ、大きなイベント「炉開き」もあります。

普段はあまり知ることのないお茶の世界ですが、
「茶人の正月」とその時に食べる「亥の子餅」ついて紹介したいと思います。



どうして「茶人の正月」というの?

茶道の世界では、11月は「炉」が始まる「開炉」の季節になります。

この「炉開き」の他に、この季節は5月上旬から6月に摘み取られたばかりの「新茶」を詰めた茶壷の口をあける「口切り」が行われる季節でもあります。

「炉」を開けて「新茶」を頂く・・・

まさに11月は茶人にとってお正月のように改まった季節であり、とてもおめでたく、かつ重要なイベントなのです。

ここから新しい1年が始まるため、11月は「茶人の正月」と言われるようになりました。



どうして11月なの?

茶道では「亥の子」の日に夏向けの「風炉」をしまい、「炉」に切り替える「炉開き」を行います。

「亥」は陰陽五行説で「水」にあたり「火災」を逃れるとされるため「亥の月の亥の日から火を使い始めると安全」といわれていました。

「亥の月」というのは、旧暦でいう10月のこと。

現在の新暦でいう11月にあたり、新暦11月の最初の「亥の日」「炉開き」を行うようになりました。

今年は【2020年11月4日(水)】が「亥の日」になります。




「炉」ってなに?

日本には四季があり、夏は蒸し暑く、冬は寒いので、季節に応じて「炉」を使い分けします。


「炉」とは、畳の部屋に42.4センチ四方の穴をあけて、そこに五徳を入れて炭を組む小さな囲炉裏(いろり)のこと。深さは42~45センチくらいで、五徳と炭の上に釜を掛け、湯を沸かし、抹茶を点てます。



5月~10月に使用するのは「風炉」
「炉」だと部屋が暑くなりすぎます。そこで、「風炉」という持ち運びのできる金属製の容器に炭を入れて小ぶりの釜を掛け使用します。



11月~4月から使用するのは「炉」
部屋全体が温かくなるように「炉」に大きな炭を組んで、大きな釜を掛けて暖めます。



季節によって「炉」を使い分けているんですね。



「炉開き」のお約束「三部(さんべ)」ってなに?

古来、炉開きでは「三部(さんべ)」を取り合わせるのがよいとされています。

三部(さんべ)とは「織部(おりべ)」「伊部(いんべ)」「瓢(ふくべ)」のこと。

・「織部」の香合(香を収納する蓋付きの小さな容器。茶道具の一種)



・「伊部」の水指(伊部とは「備前焼」の別称)



・「瓢」の炭斗(「瓢」は「ひさご」とも読み、ひょうたん、夕顔、冬瓜などのこと)




三部に加え、松竹梅や菊などのおめでたいもの、「柚」「橙」「柿」「紅葉」「銀杏」などの季節のものを取り合わせるのがよいとされています。



どうして「亥の子餅」を食べるの?

「炉開き」に「善哉(ぜんざい)」や「亥の子餅(いのこもち)」を食べるとよいとされています。

「亥の子餅」は、新米にその年に収穫した大豆・小豆・ささげ・ごま・栗・柿・糖(あめ)の7種の粉を混ぜて作った餅で、イノシシの赤ちゃん(うり坊)の色や形を真似て作られているお菓子です。

起源は、古代中国の「無病息災」を願う宮廷儀式「亥子祝」に由来しています。

日本では平安時代に広まりましたが、ちょうど収穫の時期でもあり、作った「亥の子餅」を田の神様に供え、家族で食べて「無病息災」と「子孫繁栄」を祈りました。

イノシシは多産なので、それにあやかって「子孫繁栄」を願っていたんですね。

現在は、10月~11月頃に和菓子店の店頭に並ぶことが多いです。



風習を知り、無病息災祈願を

お茶の世界と聞くと、堅苦しくて入りにくいイメージがあるかもしれませんが、

喜び溢れる「茶人の正月」にお茶とお菓子を楽しんでみるのも良さそうです。

日本の季節の風習を堪能しつつ、家族の「無病息災」「子孫繁栄」を祈願してみてはいかがでしょうか。